毎日土器への一歩

古い土器がすきだ。 からからの色も素朴な肌もおおらかな形も、土の中で長い間眠っていたのを揺り起こされた雰囲気も。 だから現代に土器をつくっている作家さんたちがいると知った時は、そして実際にそれを見たときは、とてもうれしくなった。 そっか、つく…

制作に必要なこと

毎日新聞の人生相談のコーナーで、芸術についての高橋源一郎さんの言葉が気になった。 若さを、美しさを、健康を、感覚の鋭さを、あなたは失ってゆくでしょう。では、それは、耐えられない苦しみしか生まないのでしょうか。そうではないことをあなたは知って…

朴の木のこてをつくる

ろくろの課題は飯碗からはじまり、五寸皿、切立(直立の湯呑み)、次の課題は丸徳利だ。 こてはそれぞれの寸法に合わせて毎回つくる。 木の板を電動のこぎりで大まかに切り、そのあとグラインダーや小刀でかたちを整え、やすりで面を出していく。 こてを当てた…

炭化のはじまり

炭化についての経験も知識もまだない。 不完全燃焼時における煙(煤)が土肌に吸着され黒くなるというのがぼんやりとした定義だ。 この前の薪窯の捨て間に炭化のためさやを入れさせてもらった。 結果は空気が遮断されていなかったため、真っ黒にはならなかった…

手が切れないカンナで土は削れない

挽いたあと乾燥させたら、カンナで裏側を削ってかたちを整えたり軽くする。 カンナは売っているが、つくることもできる。 鉄の薄い板をグラインダーで削り、ペンチで少しずつ折り曲げ、やする。 輪カンナは車のワイパーの中に入ってるものを曲げ、木の板に固…

行く道をつくる

日本の陶芸には、いくつかの分野があるらしい。 長らくは伝統工芸や茶陶が重要視され、その後にオブジェ、民藝、そして最近では生活工芸やクラフトが主流となりつつあるのかもしれない。 年月を背負った高度で高価な美術品ではなく、それを破った無用のもの…

素焼きと結晶水

朝、窯の栓をしにいくと、光が射していた。 800℃での素焼きをするために、200℃まで3時間、そこから600℃まで4時間、800℃まで3時間、のように時間をかけて炉内の温度を上げていく。 600℃あたりで、粘土の中の結晶に含まれる水分、結晶水がほとんど抜けると…

テクスチャーと模様

モノは、かたちとその表面からできている。 カタカナにすると、シルエットとテクスチャーからできている、と言えるかもしれない。 テクスチャーには、要素が含まれている。 手ざわり、色、模様、質感 テクスチャーで構成されるかたちもあるだろう。 つくりた…

薪窯のふしぎ

このお月さまは別々のものではなくて、ひとつのものの裏表だ。 薪窯で焼成すると、火の通り道や火の当たり方、灰のかぶり方で色が変わる。 釉薬はかけておらず、白土(若干の鉄分は含んでいる)の焼締なのだが、お月さまのような色合いになってほんとうにびっ…

鋳込でつくるマグカップを考える

鋳込という技法がある。 原型から石膏で外型をつくり、そこへ泥漿を流し込んでかたちにする。 石膏は水を吸うので泥を流し込んで時間を置くと石膏と接する面に泥の壁みたいなのができるのだ。 壁が適切な厚みになったら残りの泥は流してしまう。 鋳込の技法…

土は焼かれて陶になる

土はドベやヌタと呼ばれるどろどろねちょねちょの状態、生と呼ばれる粘土の状態、乾燥状態の三段階に区別できる。 三段階は水分量のちがいだ。 焼かないかぎりは、わりと自由に行き来できる。 焼かれて陶器になると、土になるまでにはまた果てしない年月がか…

ひとりの途方のなさ

日曜日、週の終わり、または休日の終わり、工房でアルバイトをさせてもらっている。 8時間働いて、小皿12枚と中皿8枚のタタラ成形、4寸ボウル7個加飾しかできない。 この一枚は、前の一枚よりうつくしく この一枚は、前の一枚よりはやく正確に そうやっ…